相続その他のケース

特別受益

相続人のうちに、過去に特別な金銭的援助や贈与を受けている者がいる場合もあります。

このような場合は、相続財産に加算して相続分を算定します。

これを特別受益の持ち戻しと言います。

ただしこれはあくまでも相続分で算定する場合のルールです。

実際には厳密な計算はせず、話し合いで折り合いをつけることもあるでしょう。


寄与分

財産の形成について、相続人が特別の貢献をしてきた場合も考えられます。

例えば無報酬で事業を手伝ってきた場合など。

このような特別の寄与がある場合は、相続分とは別に財産を取得できることになっています。

しかし何をもって「特別」であるとするのかは一言では言えません。

親の介護も寄与と言えますが、特別かどうかは裁判に判断を求める場合もあります。

なお親族に特別の寄与がある場合は相続人に対して金銭の請求ができることとなっております。


遺留分

遺言では、全ての財産を一人の者へ相続させる、という書き方もできます。

しかしこれでは残された相続人は、1円の財産も手に入りません。

そこで相続人には財産の引き継ぎについて最低保障分が認められています。

これを遺留分の割合と言い、遺留分侵害額請求権が認めらています。

実際には内容証明郵便により相手方にその意志を伝えます。

相手がこれに応じない場合は家事調停又は民事訴訟による法的な手続きを採ることになります。


指定相続分

遺言では相続分を指定することもできます。

これを指定相続分と言います。

例えばAさんには6/10、Bさんには4/10、という具合です。

ただ現金であれば簡単に分けられますが、不動産には適さないでしょう。


遺産分割のやり直し

平成2年9月27日の最高裁判決では、遺産分割のやり直し(合意解除の上、再度協議を行う)は可能とされています。

よって不動産の相続登記のやり直しも可能です。

しかし税務的には資産の移転が贈与とされてしまい贈与税の対象となります。

(相基通19の2-8)

もっとも相続税の申告、登記、各名義変更等も何もしていなければ、わざわざ贈与税の申告をすることは実務上考えにくいところです。

なお新たに遺産が見つかった場合は、その分だけ遺産分割を行えば問題ありません。

(修正申告等が必要となることもあります。)

また特殊なケースで遺産分割が無効とされた場合は、やり直しをしても贈与の問題は生じません。


数次相続

遺産分割協議や相続登記前に相続人が死亡してしまい、新たな相続が始まってしまったケースを数次相続といいます。

例えば父が死亡し、少しの間をおいて母も死亡したようなケースです。

この場合、まずは一次相続(父の相続)を確定させます。

遺産分割協議は母の代わりにその相続人が参加します。

その次に二次相続(母の相続)を確定させます。


未成年者がいる場合

未成年の相続人については、親権者が法的な代理人として手続きを行います。

しかしその親権者も相続人である場合は、どちらも利益を受けられる状態になってしまいます。

例えば親も子も、どちらも財産を相続する権利がある場合です。

このような場合には、未成年者の特別代理人を家庭裁判所に選任してもらうことになります。

その親は代理人にはなれません。


行方不明者がいる場合

相続人のなかに行方不明者がいる場合もあります。

このような場合は、家庭裁判所に財産管理人の選任を請求することになります。

また生死が不明な場合は、家庭裁判所に失踪宣告を求めることができます。


特別縁故者

相続人がいない場合に、特別縁故者から請求があれば、相続財産が与えられることがあります。

特別縁故者とは、被相続人と特別に縁故(つながり)があった者をいいます。

内縁の配偶者、看護に努めた者など。

いずれにしても家庭裁判所が判断をします。


国外居住者がいる場合

相続人のなかに、日本に住所を有しない者がいる場合もあります。

この場合は、例えばアメリカであれば日本領事館等で一定の手続きをして、遺産分割協議書に添付する書類の交付を受けます。(サイン証明書、印鑑証明書)


相続法の改正について

相続に関するルールが平成30年に大幅に変更となりました。

詳しくはコラムをご参照ください。