平成30年相続法改正
2020年9月26日
平成30年に相続法(民法)が改正となりました。
ここではその概要をまとめています。
改正の主なテーマ
改正は主に次の7つのテーマに分類できます。
(1)配偶者の居住権の保護
(2)遺産分割等の見直し
(3)遺言制度の見直し
(4)遺言執行者の権限の明確化
(5)遺留分制度の見直し
(6)相続の効力等に関する見直し
(7)相続人以外の者の貢献の考慮
以下概要を説明していきます。
(1)配偶者の居住権の保護
従来、遺産分割で配偶者が被相続人の住居を相続してしまうと、残りの遺産を受け取れないといった弊害がありました。
そこで住居を所有権と居住権(配偶者居住権)に分けて相続できるようになりました。
よって配偶者は居住権と遺産の一部(主に預金など)を取得するといったことがしやすくなる狙いがあります。
なお配偶者短期居住権というものもあり、相続後の遺産分割までの居住を保護する権利となっております。
ただこちらは金銭的価値はないものとされています。
(2)遺産分割等の見直し
本来配偶者に対して住居の遺贈又は生前贈与があった場合、その分を加味して遺産分割等がされることがあります。
しかしそれでは配偶者に遺産が残らないため、その遺贈又は生前贈与を考慮しないで計算することとしました。
特別受益の持戻し計算をしない、という言い方をしますが婚姻期間20年以上の夫婦間での遺贈又は生前贈与という条件があります。
また遺産分割の別の問題点である、なかなかまとまらないという状態も想定し、1/3×法定相続分までは預貯金の仮払いを受けられる制度も設けられています。
(3)遺言制度の見直し
遺言を自分で書くといった行為は今までもされていましたが、紛失や盗難など保管に問題がありました。
そこで法務局で保管してもらえる制度が設けられました。
この場合、検認手続きが不要になることもメリットとなります。
また遺言は全てが自筆であることが求められていましたが、例えば財産目録などは自筆でなくても認められるといった改正もされています。
(4)遺言執行者の権限の明確化
特に遺言で第三者に不動産を遺贈する場合など、その手続きが煩雑になる場合があります。
そこで遺言書で遺言執行者(例えば弁護士)を定めておけばスムーズに遺言を執行することができます。
しかしその遺言執行者について、従来は権限が不明確なところがあったため相続人とトラブルになることもありました。
そこで法改正によりその権限が具体的に明確化されることとなりました。
例えば遺贈の履行は遺言執行者のみが行う、とされましたので、遺贈を受けた者は遺言執行者に対して手続きの要求をすればいいことになります。
(5)遺留分制度の見直し
従来は遺留分(相続人の最低保証分)が侵害された場合は遺留分減殺請求権が認められていましたが、改正により金銭の支払いを請求できる権利に変わりました。
これを遺留分侵害額請求権と言います。
よって不動産を引渡したり、共有するといったことがなくなります。
また遺留分算定時には相続開始前10年以上前の特別受益は贈与財産額に含めないこととなりました。
(6)相続の効力等に関する見直し
相続により法定相続分を超える権利を承継した者は、その部分について登記等の対抗要件がなければ第三者にその権利取得を対抗できないとされました。
よって今後は登記等を早期に行うことが重要となってきます。
(7)相続人以外の者の貢献の考慮
相続人以外の親族であっても被相続人に対して無償で療養看護等をした場合は、一定の条件はありますが相続人に金銭の支払いを請求できるようになりました。
この金銭を特別寄与料と言います。